【比叡山延暦寺】西塔エリア

日本仏教の母山・比叡山延暦寺。「東塔・西塔・横川」の3つのエリア、その中でも、最も静寂が深く、修行の息吹が色濃く残る「西塔」エリアをご紹介します。

比叡山延暦寺。その名は知っていても、多くの参拝者が東塔エリアだけで満足して帰ってしまうのは、実にもったいないことです。
東塔からシャトルバスで数分、あるいは歩行道(東海自然歩道)を20分ほど歩いた先に広がる「西塔」。そこには、観光地化された喧騒とは無縁の、杉木立に囲まれた圧倒的な静寂と、1200年前から続く厳しい修行の気配が今も色濃く残っています。
【比叡山延暦寺・西塔】基本情報
| 公式HP | こちら▶ 西塔▶ |
| 所在地 | 滋賀県大津市坂本本町4225 |
| 問合せ | 077-578-0001(9~16時) |
| 開堂 | 12月~2月(9時30分)3~11月(9時) |
| 閉堂 | 16時 巡拝受付15時45分まで |
| 拝観料 | 大人1000円・中高600円・小学300円 (東塔・西塔・横川共通券) |
| 駐車場 | 西塔エリアの入り口前に無料駐車場有り |
| トイレ | 駐車場にトイレが設置されています。 ※広い境内でトイレを見つけるのは大変なので入堂前に済ませておくのが安心です。 |
※撮影時の情報です。
比叡山ドライブウェイ(有料)
お車で比叡山延暦寺に行くときは、比叡山ドライブウェイ(有料)を通ります。
料金設定は
・仰木ゲート⇔田の谷ゲート/2430円
・仰木ゲート⇒東塔⇒仰木ゲート/3140円
※撮影時の料金ですが変更になる場合もあります。
「比叡山ドライブウェイクーポン」等で検索すると、クーポン券が載っているサイトがあるので、是非ご利用下さい。
駐車場について

西塔エリアの入り口前に無料駐車場があります。
画像にはありませんが、駐車場にトイレが設置されています。広い境内でトイレを探すのは大変なので、散策を始める前にここで済ませておくと安心です。
西塔誕生のストーリー

比叡山延暦寺釈迦堂
西塔は、延暦寺を開いた最澄が亡くなった後、その一番弟子である第二世天台座主・円澄によって開かれました。
もともと比叡山は東塔から始まりましたが、最澄は「もっと多くの僧侶が、より深く修行に打ち込める場所を」という願いを持たれていました。その遺志を継いだ円澄が、承和年間(834年〜)に釈迦堂を建立し、本格的にエリアを整備したのが西塔の始まりです。

釈迦牟尼佛
東塔が「比叡山の表舞台」なら、西塔は「修行の核心」。
最澄の理想を形にするために、あえて険しく静かなこの地が選ばれたのです。
【比叡山延暦寺・西塔】境内散策
五重照隅塔

伝教大師最澄の根本精神を象徴するこの石塔は、最澄が『山家学生式』に記した「一隅を照らす、これ則ち国宝なり」という一節に由来します。参拝者が「自らが世の一隅を照らす存在となる」ことを誓い、願いを込めて建立されました。
石造りの五重塔は、華美な装飾を排した簡素な佇まいながら、周囲の深い杉木立に静かに溶け込み、訪れる人を凛とした空気で包み込んでいます。
箕渕弁財天

西塔に入り、最初のご祈願スポットが「箕淵弁財天」です。「比叡山三弁天」の一つで、大弁財天女をお祀りしています。
周囲は杉木立に囲まれ、非常に静謐で凛とした空気が漂う場所。心静かにご挨拶する事が出来ました。
にない堂(常行堂・法華堂)ー 修行の厳しさを象徴する場所

にない堂です。「常行堂」と「法華堂」というふたつのお堂が廊下で繋がった建物。
堂宇に向かって左が、阿弥陀如来をご本尊とする「常行堂」。向かって右が、普賢菩薩をご本尊とする「法華堂」です。

武蔵坊弁慶が両堂を繋ぐ廊下に肩を入れて担ぎ上げたという伝説から、その名がつきました。

ここでは現在も、90日間不眠不休で阿弥陀仏の周りを歩き続ける「常行三昧」などの過酷な修行が行われています。運が良ければ、堂内から響く修行僧の読経の声を聞くことが出来るかもしれません。

常行堂

法華堂
「にない堂」は、文禄4年(1595年)に建立。国の重要文化財に指定されています。
「釈迦堂」転法輪堂ー 西塔の本堂

西塔の中心に位置するのが、重要文化財の「転法輪堂」、通称「釈迦堂」です。
この建物は、延暦寺に現存する最古の建築物。もともとは園城寺(三井寺)の本堂だったものを、豊臣秀吉が文禄4年(1595年)に強制的に移築させたという数奇な歴史を持っています。

堂内に一歩入ると、そこには巨大な釈迦如来立像が。薄暗い堂内に線香の香りが立ち込め、板張りの床を歩く音が響く瞬間、時代が数百年巻き戻ったかのような感覚に包まれます。
以前こちらで座ってお参りをしていた際、お寺の方が「立ってお参りするのが作法ですよ」と優しく教えてくださいました。他にも色々なお話が聞け、その時初めて天台宗の文化に触れられた気がして、とても嬉しい気持ちになったのを覚えています。
「浄土院」最澄が今も眠るー比叡山で最も清らかな場所
「浄土院」は、最澄さんの御廟(お墓)がある場所。
実はここ、比叡山で「最も清浄な場所」と言われているんです。
なぜなら、ここを守るお坊さんは「掃除地獄」と呼ばれるほど、一日中、一分の隙もなく境内を掃除し続ける修行(十二年籠山行)をされているから。
ここでの掃除は単なる美化作業ではなく、自らの心の塵を払う「動の修行」です。そのため、冬の雪の日も、雨の日も、一日中休むことなく続けられます。
残念ながら、2度も比叡山延暦寺に行きながら、この「浄土院」には行った事がないのです...
なので、画像もありません...いつか、またお参りに行きたいと思います。。。
恵亮堂

比叡山の中でも特に優れた修力と霊験(不思議な力)を持っていたとされる高僧、恵亮和尚をご本尊としてお祀りするお堂です。
多くの仏堂が如来や菩薩といった仏様を本尊とする中で、恵亮堂は実在した高僧をご本尊として祀っている点が大きな特徴です。周囲は苔むした石垣と深い木々に囲まれており、西塔らしい厳かな空気を感じられる場所です。
【比叡山延暦寺・西塔】巡りを終えて
釈迦堂の重厚な佇まいや、左右対称の「にない堂」を繋ぐ回廊の下をくぐるとき。私たちは単なる観光客ではなく、かつてこの道を歩んだ修行僧たちの祈りの末端に、ほんの少しだけ触れることができるのかもしれません。
東塔が「動」の聖地であるならば、西塔は間違いなく「静」の聖地です。
木漏れ日が揺れる苔むした石段を一歩ずつ踏みしめるたびに、日々の喧騒で波立っていた心も、不思議と穏やかに凪いでいくのを感じました
便利な現代からあえて離れ、不便さの中に自分を置くことの大切さ。最澄さんがこの地に託した「照千一隅(一隅を照らす)」の精神は、今もこの深い森の静寂の中で、変わることなく息づいています。




