
島根県大田市に鎮座する物部神社は、静かな山あいにたたずむ古社です。境内へ足を踏み入れると、森に包まれた澄んだ空気が広がり、その立派な本殿の大きさに思わず見上げてしまうほどでした。

鶴にまつわる伝承や勝負運のご利益など、物語のような魅力がいくつもある神社です。自然と調和した落ち着いたたたずまいも印象的で、穏やかな時間が流れていました。
【物部神社】基本情報
| 公式 | こちら▶ |
| 所在地 | 島根県大田市川合町川合1545 |
| 問合せ | 0854-82-0644 |
| 参拝時間 | 自由参拝 |
| 拝観料 | 無し |
| 駐車場 | 駐車場は境内に2カ所あり(無料) |
| 授務所 | 8時30分~17時 |
| 授与品 | ▶ 御朱印・お札・御守りなど。つるみくじが人気です。 |
※撮影時の情報です。
駐車場について
駐車場は境内に2ヶ所あり、無料で利用できます。

1ヶ所目: 神社の入口前にある駐車スペース

2ヶ所目: 境内(社殿に向かって)右側にある駐車場
【物部神社】由来と歴史

物部神社の歴史は古く、創建は6世紀前半と伝えられています。御祭神である宇摩志麻遅命は物部氏の祖とされ、日本で最初に「鎮魂」の祈りを行った神として語り継がれてきました
御祭神が石見の地に入られた際、鶴に乗って山に降り立ったという伝承があり、その鶴の姿が神社の神紋の由来となっています。現在の本殿は江戸時代の再建を経て今日に至っており、長い時代を通して大切に守られてきた歴史を感じさせます。
【物部神社】ご利益

物部神社は、勝負運のご利益で知られています。古くは武将が戦勝を願って参拝した記録も残っており、現在ではスポーツの大会、受験、大切な本番を控えた方々が多く祈願に訪れるそうです。
また、御祭神が文武両道の神でもあるため、学業成就や仕事の節目における祈願にも心強い存在となっています。このほかにも、病気平癒、社業繁栄、交通安全など、幅広いご利益をいただける神社です。
【物部神社】境内めぐり
大鳥居

物部神社の大鳥居は、島根県内の木造鳥居としては最大の大きさを誇ります。
鳥居をくぐると、玉砂利を敷き詰めた参道がまっすぐに伸びていました。両側には長い年月を経た大きな木々が立ち並び、神域としての厳かな風格を感じさせます。
狛犬と狛鶴

狛犬の他にも、「狛鶴」がいます。物部神社の伝承にゆかりのある鶴をかたどったもので、社殿の前を静かに守っていました。

御祭神である宇摩志麻遅命が鶴の背に乗って降り立ったという伝説が伝わっているため、物部神社では鶴が神様のお使い(神使)とされています。御神紋も太陽を背負った「日負鶴」という意匠で、境内のあちこちに鶴の像やこの紋を見つけることができます。

手水舎

手水舎には、砂金を含む「富金石」が手水鉢として使われています。石の上には「浄・勝・財・健・徳」の5つのご利益を表す曲玉(まがたま)が彫られており、これに触れることで、それぞれのご神徳を授かることができるとされています。

また、注がれている水は、境内の御神井から湧き出ている清らかな御神水だそうです。
拝殿

拝殿に近づくと、入母屋造の屋根がゆるやかに広がっていました。落ち着いた色合いの銅板葺きの屋根は、昭和11年から12年にかけて改築された際、台湾から運ばれた檜が多く使われたとされています。
柱や梁にはその風合いが今もよく残り、正面に立つと木の温かみのある質感が穏やかに伝わってきました。
本殿

本殿は、島根県内では出雲大社に次ぐ大きさを持ち、春日造(かすがづくり)の建築としては日本一の規模とされています。
創建は継体天皇8年(513年)と伝わりますが、その後、石見銀山を巡る戦いの影響などで三度焼失しました。この歴史から、「亀は水を呼ぶ」といわれ火災を避ける願いが込められ、屋根の千木の真下には、子どもの背丈ほどもある大きな亀の彫刻が施されています。

本殿は宝暦3年(1763年)に再建され、文政元年(1818年)の修理を経て、安政3年(1856年)に宝暦期の規模で改修され、現在の姿に整えられました。
授与所

授与所の開所時間は8時30分~17時頃。
授与所は、社殿の向かって左側です。
社殿左側の西エリア

境内はとても広大で、社殿の左右に様々な境内社(けいだいしゃ)が鎮座しています。まずは、社殿に向かって左側にあたる「西側エリア」からご紹介します。矢印の階段の先へお進み下さい。
西五社(荒経霊社・皇祖四代社)/末社

■荒経霊社
ご祭神:素戔嗚尊
■皇祖四代社
ご祭神:天忍穂耳尊・瓊瓊杵命、彦火々出見尊・鵜草葺不合命(天照大御神の直系子孫4代)
稲荷社/末社

ご祭神:稲倉魂命・大穴牟遅神・大年神・大地主神
ご利益:五穀豊穣・諸業繁栄等
菅原神社(天満宮)/末社

ご祭神:菅原道真公
ご利益:学業成就・受験合格・雷除・五穀豊穣等
淡島神社/末社

ご祭神:少彦名命
ご利益:医薬の神・足傷神・女性の守り神(腰から下の病に霊験あらたかと言われています。)
社殿右側の東エリア
東五社(神世七代社)/末社

「日本書紀」では、天地開闢ののちにあらわれた13柱の神を神世7代として記しており、境内の末社ではその神々がお祀りされています。

須賀見神社・乙見神社/末社

ご祭神:六見宿禰命・三見宿禰命
後神社/摂社

ご祭神:師長姫命
土社・火社

■土社
土の神、陶器の神様。
鎮火祭の日には、かつての消火用具である赤土をお供えする習わしがあり、そのことから防火の神としても親しまれています。
■火社
火を司る神様。
鎮火祭では水神・土神・瓠・川菜をお供えし、火の災厄を鎮めています。
一瓶社・妙見神社・眞名井神社/末社

■一瓶社
ご祭神:佐比売山三瓶大明神
石見国を治めた宇摩志麻遅命は、平和を祈願して3つの聖なる瓶をそれぞれの地に納めました。そのうちの一つが一瓶社で、二つ目は浮布池の邇幣姫神社に、三つ目は三瓶山の麓にある三瓶大明神に奉納されたと伝えられています。これが「三瓶山」という名の由来になったとも言われています。
■妙見神社
妙見大神は、神道では「天之御中主神」と同一の神様とされています。天之御中主神は、宇宙の根源を司る「造化三神」の一柱です。一方、仏教では「妙見菩薩」として信仰され、北極星の神として天上を護る存在とされています。また、ここには「地主神(大地主神とも)」と呼ばれる、土地を護る神様も一緒にお祀りされています。これら二柱の神様を合わせ祀っているため、「天」と「地」の両方を護るお社となっています。
■眞名井神社・御神井
御祭神:彌都波能賣神(水神様)
御神井には、平安時代から枯れることなく豊かな御神水が湧き続けています。
祓戸神社と禊石

■祓戸神社
ご祭神:瀬織津比売神・速開都比売神・気吹戸主神・速佐須良比売神(四柱の祓戸大神様)
祭日は6月30日で、大祓祭の日にあたります。大祓祭の斎行に先立ち、祭典が執り行われます。
■禊石
神職が神事の際に身の穢れを祓い清めるための場所です。
表参道から左側、西門エリア

社殿前方の、表参道沿いに位置する左側のエリアです。ここには大きなムクノキがあり、周囲を木々に囲まれたような、不思議な雰囲気を持つ空間となっています。
パーソンロン号御神馬像

七冠馬シンボリルドルフの父馬であり、その血統で一時代を築いたサラブレッド「パーソロン号」が御神馬像のモデルとなっています。競馬ファンがよく訪れることから、御神馬像の前には、参拝者が供えた野菜や果物などが置かれていることもあるようです。
そのすぐ横には、納札所がありました。
識子さんのブログで紹介された「小さな祠の毘沙門天さん」

神仏研究家の桜井識子さんのブログで拝見した「ここにも来てくれ」と声がかかったという小さな祠と毘沙門天像。
最初は境内のどこにあるのか分からず、探し回りました。神社の方に伺ってみると、無事にこちらの場所で見つけることができました。
その際にお話を伺ったのですが、実はこの毘沙門天像は、神社として正式にお祀りしているものではないそうです。どなたかが置いて行かれた物だとのことでした。

現在(2025年12月)は、このような様子でした。誰かが置いていった物であるにもかかわらず、しっかりと大切にされていることに心が温まりました(^^♪
恵比寿神社/末社

ご祭神:大国主命
ご利益:商売繁昌・海上安全等
夜なき椨・聖天さん

古来より子育ての御神木として有名な「夜なき椨(たぶ)」は、夜泣きをする子どもをこの木の空洞に一晩寝かせておくと、夜泣きが治ると伝えられています。
その「夜なき椨」の空洞の中には、縁結び・安産の神とされる大聖歓喜天がお祀りされています。いただける御神徳は、子どもの病気平癒、夫婦和合、縁結び、子宝授けなど多岐にわたります。

【物部神社】参拝を終えて
島根県の静かな山あいに鎮座する物部神社は、予想していた以上に広大で、深い歴史と風格を感じさせる場所でした。
県内有数の大きさを誇る木造の大鳥居、そしてまっすぐに伸びる玉砂利の参道は、神域への期待感を高めてくれます。古来よりこの地を守ってきた神様の存在を、肌で感じ取ることができました。
特に印象的だったのは、御祭神の伝承にちなんだ「狛鶴」の存在です。至るところで鶴の意匠や像を目にし、物語が今も息づいていることに感動しました。勝負運のご利益で知られていますが、それ以上に、この静かな環境と歴史の重みが心に残りました。